箏の本体は桐で、樹齢20年以上、直径30㎝以上の寒い荒地に育った、
木目の引き締まった木が上物とされています。
切り出した丸太を数年間自然乾燥させ、甲羅(又は荒甲)と呼ばれる
表面に丸みをつけた箏材に木挽きします。
この段階で、丸太のどの部分を木挽きするかによって
箏の表面に出る木目が決まります。
柾目を箏の表面にするには、原木の半径だけで取らないと出ないので
よほどの大木でないと柾目の通ったものは取れません。
年輪のよく締まった柾目の細かい箏は「糸柾」と呼ばれ極上品とされます。
←柾のお箏
↓ 表面がわかりずらかったのでアップにしてみました
また、古木からは円形の木目が節目のように幾つも表面に現れた模様が
でる事があります。これは「玉目」と呼ばれます。
後から紹介する動画の最後に出てくる1千万円のお箏がその玉目です。
現在はそこまでの桐の大木・古木がないため
いい木目のお箏は滅多に市場に出回らないそうです。
お箏の値段がピンキリなのはまずここから決まっていくのです。
ここから更に1年ほど屋外に放置して、あく抜きと自然乾燥させます。
その後カンナをかけ、裏側をくり抜いて槽を作ります。
いい音色にする為に漕の内部に化粧彫りがなされます。
(安いものには化粧彫りはなされません)
「すだれ目彫り」(今は機械で彫られたりします)や
高級品になると「綾杉」「子持ち綾杉」という彫り方がされます。
「綾杉」や「子持ち綾杉」は職人さんがノミでひとつひとつ
丁寧に彫っていきます。
化粧彫りが施されているかどうかは、音穴を覗けば見えますので
お手持ちのお箏の裏側を見てみてくださいね。
裏板にも2通りあって、底にべったり貼り付けてある(並甲)と
側面の内側を45度に切って中にはめ込むようにしたもの(くり甲)があります。
これが並甲。側面を見れば継ぎ目がわかります。
この継ぎ目のないものがくり甲です。手が込んでいる分更にお値段が上がります。
ここから表面を焼きゴテで焼き色をつけていきます。
そして更に磨いていきます。この焼き色の工程で
焦がしてしまったりすると今までの苦労が全て水の泡になるそうです。
白っぽいお箏と黒っぽいお箏があるのは、この焼き色をつける際に
ミョウバンを塗ってから焼くか、灰アクを塗ってから焼くかの違いです。
本体が仕上がると、外装を施していきます。
竜舌には蒔絵などで美しく仕上げます。
口前や柏葉を縁取りしたものもあります。
上述したように、高いお箏というのは1本の丸太をくり抜いて作ります。
逆に安価なものは、1本の丸太で2面作って部品をそれぞれ貼り合せたものです。
音色も重さも全然違います。
また、作り方や装飾の仕方によってもお値段が非常に変わります。
ですが、どんな値段のお箏にしても機械で大量生産できるものではなく
職人さんがひとつひとつ仕上げていきます。
工程を見て頂けたら、安価と言えどもそこそこのお値段はするというのが
わかっていただけるかと思います。
私が小さい頃、お箏を跨いで行こうとした時にひどく叱られました。
もちろん、高級なお箏を蹴飛ばしでもすれば大変な事になるからなのですが
それだけではなく、職人さんが心を込めて作ってくださった楽器を
もっと大切にしなさいという意味もあったんだなと
今更ながらしみじみ噛み締めております。
(それでも舞台などでは、かなりの面数のお箏が所狭しと並ぶ為
移動の際や調弦の際にどうしても跨いでいかなくては
いけない場面も出てきます。そういう時は必ず「ごめんなさい」と
謝って跨がせていただくように心がけてます)
お箏を作る工程の動画を2つ紹介いたします。
2つ目はその昔機械のなかった時代の
本当に1から全て手作業で作られている様子です。
うちにあるお箏もこういう時代に作られたものがあります。
この動画を見た時に何故かとても泣けてしまいました。
そして更にお箏が愛しく思えてきました。
大切に扱えば、お箏は何世代にも渡って受け継いでいけます。
これを見て、どうか楽器を大切に扱っていただけますように。
そしてご自分の楽器を愛していただけますようにと切に願います。