住吉詣

作曲者:初代 菊塚検校


調弦【三絃】:六下り


調弦【箏】:平調子


歌詞:

道知らば 摘みにもゆかん 住之江の 岸に生ふちょう忘れ草
ここは難波の車止め 憂さ忘れ草 摘ままじと 唯ひと声の笛の音に
乗りて出で立つ思ふどち 語るほども名に高き 阿倍野の神社 天下茶屋
走り過ぎつつ 巻き煙草 吸いきらぬ間にいさぎよく
着くや心も住之江の 四つの御社(みやしろ) 伏し拝み 
浜へ出づれば海人の子が 拾うはまぐり あさり貝
したたり貝のしたしくも やよ待てしばし 事問わん
もの言ふ花の桜貝 いざや拾わん 家づとに
妹に見せまし 子安貝 夜の憂き事も忘れ貝
かひある御代に 住吉の 岸の姫松 姫松岸の 岸の姫松 めでたさよ


解説:

生ふちょう=生えているという
思うどち=気の合う仲間
家づと=家へのお土産
姫松岸の=姫松と姫待つのかけ言葉

この曲は、現在は南海電鉄に合併されている阪堺鉄道が
明治18年末に難波から大和川間を開通した事を記念して作られました。
難波・阿倍野・天下茶屋と難波から住吉大社までにある土地を読み込みつつ
当時徒歩で半日もかかった道程を
「気の合う仲間と汽車に乗り込むと、あっと言う間に着いてしまった」
といった驚きで描いています。
後歌は多くの和歌にも詠われた住吉浜にことよせて
貝尽くしで新しい時代をめでたく言祝いでいます。

分類: