新娘道成寺

石川勾当

調弦【三絃】本調子→三下り→本調子

調弦【箏】半雲井調子


歌詞:

鐘に怨みは数々ござる
初夜の鐘を撞く時は、諸行無常と響くなり
後夜の鐘を撞く時は、是生滅法と響くなり
晨朝の響きには、生滅滅已 入相は寂滅已楽と響けども、聞いて驚く人もなし
我も五障の雲はれて、真如のつきを眺め明かさん
言はず語らずわが心、乱れし髪の乱るるも、
つれないはただ移り気な、ああどうでも男は悪性な
桜桜と謡はれて、言うて袂にわけ二つ、勤めさへただうかうかと
どうでも女子は悪性な、東育ちははすぱな者ぢゃえ
恋のわけ里数へ数へりゃ、武士も道具を伏せ編笠で、張りと意気地の吉原
花の都は歌でやはらぐ敷島原に、勤めする身は誰と伏見の墨染
煩悩菩提の撞木町より、難波四筋に通ひ木辻の禿立から、室の早咲き
それがほんの色ぢゃ、ひいふうみいよ
夜露雪の日、下関路を、共にこの身は馴染重ねて
仲は丸山、ただ丸かれと、思ひ染めたが縁ぢゃえ


解説:

作曲者は不明 石川勾当ともいわれるのでこの分類に入れました。

「鐘の声は刻を知らせて響くだけではなく、数々の意味がある。
まず 日暮れになって撞く鐘の音は、
人生はいつも変わって常無きものと響いている。
真夜中になって撞く鐘は、移り変わる人生には生と死がいつもあると響いている。
夜明け方に響く鐘は、生死を超越した本当の人生があると響き、
夕日の沈んでいく頃に聞く鐘の音は、
生死をとらわれない所に本当の人生の楽しみがあると響いているが、
これを本当に聞いて知っている人があるのだろうか。
私は迷いや煩いを排して、正しい心に立ち返って、
清浄な一生を過ごしていきたいものだ。
人に問われれば黙っているが、私の心は乱れ髪のように乱れている。
それは無情で移り気な男の心にきれいだとおだてられて、
本当だろうか嘘だろうかと心は二つに迷う。
廓勤めだから落ち着き無く、ついうかうかと暮らしている
女という者は浮気なのだろうか。どうせ江戸育ちだから、お転婆である。
国々中に遊郭は多い。
その中に入って指折ってみれば、将軍様のお膝下の吉原では
武士が編笠で顔を隠しているが、意気地の張っているここでは威張るわけにはいかない。
京では、島原が格があり品があるが、
伏見の撞木町では衣を着た坊さんの客もある事だろう。
浪花の新町や奈良木辻町の廓へと通えば、13・4の子供でも客をとる。
本当にそれは、室育ち、早咲きのようだ。
それが色恋であるのか。
夜露に濡れたり、雪の日でも、下関や長崎の円山に首尾をつけて通いつめ
お互いに末は円く結ばれるようになったのは、深い縁ではないかな」

分類: